第60章 この男が彼女にさらなる試練を与える

江森哲也は中野航平の顔色をちらりと窺い、手にしていた封筒を彼の前へそっと置いた。

中野航平は視線を落とす。目に飛び込んできたのは「H市裁判所」の大きな文字だった。

胸の奥が、す、と冷える。

その下の数字に目が止まった。

7月5日 午前10時 開廷。

――あと二週間しかない。

突然届いた開廷通知。中野航平は完全に不意を突かれた。

これまで頭の中で描いていた筋書きが、泡のように弾けて消える。

長谷川栞は言った。離婚は意地じゃない、と。

彼が「離れたくない」と言ったところで、離れないで済む話じゃない、と。

……

同じ頃。

カフェ。

長谷川栞と石渡恭平は向かい合って座ってい...

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